無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

583. そこのみにて光輝く

f:id:desertislandmovie:20210616125259j:plain

引用元:Yahoo.co.jp

 

きみの鳥はうたえる」に続いて佐藤泰志の小説が原作の作品

 

2014年の公開

 

舞台も同じく函館

 

海炭市叙景」(2010年)、「オーバー・フェンス」(2016年)と共に函館三部作

 

 

 

毎日仕事もせずにパチンコ三昧の達夫(綾野剛)は、ある日パチンコ屋でライターを貸してくれと言ってきた拓児(菅田将暉)と知り合う

 

寡黙な達夫と違い人懐っこい拓児は、ライターの礼にと家に呼び姉に作らせたチャーハンを振る舞う

 

その家は海岸に面したバラック小屋で、痴呆の父親とその世話に疲れやつれた母親、そしてチャーハンを作ってくれた姉の千夏(池脇千鶴)が達夫と同居していた

 

その後、達夫は千夏が家族を養うために、昼間の水産加工場での仕事に加えて夜の仕事(バーの一室で体を売る)もしていると知るも、彼女への想いは次第に大きくなる

 

拓児は出自をからかわれたことに逆上して傷害事件を起こした過去があり、仮出所中の面倒を地元で造園業を営む中島という男(高橋和也)に見てもらっていた

 

この中島は千夏の不倫相手で、そろそろ関係を清算したい千夏に対して弟の面倒を理由に引き伸ばしていた

 

 

 

登場人物がみな問題を抱えていて、互いに助け合おうとはするもののそれを妨害しようとする輩もいて、どうにも苦境から脱することが叶わない

 

かつては函館を抜け出して、誰も知っている人がいない街で暮らすことも考えた千夏も、結局は家族を置いては行けず、、

 

都会にも(田舎以上に)害になる人は存在するけれど、少なくとも匿名性が保てる利点は大きく、良い方にも悪い方にも大きな可能性が残されている

 

一方、本作で描かれる函館には、規模の小ささに起因する可能性の幅の狭さがあり、好転するパターンをひとつ潰されてしまった時の「詰んだ」感が半端ない

 

どんよりした曇り空に夢を見ることが叶わない重苦しさが重なる

 

 

 

明日は、違った重苦しさのあるドイツ映画を紹介します