無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

460. 秒速5センチメートル

引用元:cwfilms.jp

 

新海誠の監督作品とは知らず、「雲のむこう、約束の場所」より先に観た作品

 

三つの短編を繋いだオムニバス

 

1) 桜花抄

 

時は1990年代前半

 

貴樹と明里は、互いに東京の小学校に越してきた転校生

 

性格的にも通じるものを感じていたふたりは、周囲から仲の良さを冷やかされ(揶揄われ)ながらも、信頼し合っていた

 

そんなある日、父親の転勤で明里が栃木に行ってしまう

 

中学生になり、最初の夏に明里から手紙が届き、それ以来ふたりは文通をするようになる

 

そして三学期に入ると、貴樹も鹿児島に転向することになり、引っ越しの準備を進める中、貴樹は明里に会いに栃木へと向かう

 

 

2) コスモナウト

 

数年後の鹿児島

 

種子島に住む高校3年生の花苗は、卒業を目前にしながらも、クラスで唯一進路を決められないでいた

 

憧れている東京からの転校生・貴樹にも、その想いを伝えられないでいた

 

ある日、これまでずっとスランプが続いていたサーフィンで、上手く波に乗ることができた花苗は、「今日こそは想いを告げよう」と、貴樹の帰りを待ち、一緒に帰る

 

しかし、東京の大学に進学する貴樹の目には、自分の姿など映っていない(或いは告白させない空気を作ってくれていた)のだろう、と感じた花苗は、泣き出してしまう

 

 

3) 秒速5センチメートル

 

さらに数年後、東京で社会人生活を送っている貴樹

 

只々、忙しく働くうちに毎日が過ぎてしまい、3年間つきあった理紗も「1000回メールしても、心は1センチくらいしか近づけなかった」と言い残し、離れて行った

 

貴樹は「このままでは前に進むことはできない」と感じ、会社を辞めるも、これから向かうべき方向さえわからず、途方に暮れる

 

 

 

今回久しぶりに観直しても、「桜花抄」の、雪の中を新宿から栃木に向かうシーンは、まるで実体験の様に覚えていた

 

新宿駅の雑踏の中でこれから会いに行こうとする高揚感や、途中で雪が激しくなるのを見て不安に思う気持ち、乗り換えのホームで強風が手紙を飛ばしてしまった時の落胆、真っ暗な中で二時間も電車が停まってしまった時の絶望感と、「どうかもう(駅で待っていないで)家に帰っていてくれ」と願う気持ちなど、情報として脳にある記憶ではなく、感情が揺れ動いたことを思い出したことで、実体験の様に感じたのだと思う

 

 

新海誠の他の作品と比較しても、ファンタジーの要素が無い分、自分にとっては入り易い作品から鑑賞することができたと思う、一方で(他の作品を観てからは)ファンタジーを描くことのできるアニメの可能性を(まったく今さらながら)再認識されられた

 

 

三話目については、貴樹が焦っている事情や、会社を辞めた理由など(欲を言えば)もう少しスムーズに繋げて欲しかったし、主題歌の扱いも過剰な印象

 

それでも三回目を観て、また同じように「雪の日に北に向かうのは嫌だな」と必ず思う気がする

 

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