引用元:filmarks.com
アーティゾン美術館で開催中の「ふたつの旅 青木繁 坂本繁二郎」展を観てきた
ふたりは共に1882年に福岡県久留米市に生まれ、同じ高等小学校で学び、同じ洋画塾で画家を志した
アーティゾン美術館の創設者・石橋正二郎も久留米市出身で、このふたりの画家を同時に展示する二人展は66年振りということで、特別な思い入れを感じさせた
年代順に約250点の作品が展示され、個々の作品の解説とは別に、当時の様子を伝える説明書きも充実していて、食い入るように眺めてはまた作品に戻ったり、しっかり堪能した
いわゆる「早熟の天才」青木繁の方が先に上京、数年後に帰省した青木の作品を観て、その成長に焦りを感じた坂本繁二郎も上京、共に切磋琢磨する
そして1907年の東京勧業博覧会に共に出品し、互いに三等賞となるも、その中で主席と評価された坂本に対して、前評判の高かった青木は末席に終わる
また父の危篤により久留米に戻る青木は、自身も肺を患うようになり、一方の坂本はパリへの留学を叶える
こうした説明書きがリアルに伝わってくるように、初期から強烈な個性を放つ青木に対して、徐々に作風を進化させていく坂本
1907年に出品された互いの作品も展示されていて、別々の魅力に溢れていた
これで二人の人生が劇的に変わってしまった(他の要素もあるけれど)のかと思うと、言葉を失ってしまう
しかし、坂本(28歳で肺結核により死去)の死後、作品の保存と再評価の機会に向けて青木をはじめ尽力された方たちの話もあり、こうしたお陰でいま展示を観ることができているのかと、有難く思った
すっかり前置きが長くなってしなったけれど、2015年公開、画家が主人公のドイツ・ベルギー映画
大好きな「グッバイ、レーニン!」のヴォルフガング・ベッカー監督の主演のダニエル・ブリュールが12年振りに一緒に取り組んだ作品
まだ何者でもない美術評論家のセバスチャン(ヴルフガング・ベッカー)は、かつて「盲目の画家」として脚光を浴びながらも今は隠遁生活を続けているマヌエル・カミンスキー(イェスパー・クリステンセン)の伝記の執筆で一山当てようと考える
兎にも角にも行ってみなければと、隠遁先(?)であるアルプスの田舎町まで出掛けるも、自己中心で周囲への配慮ができないセバスチャンはことごとく出会う人たちの不評を買ってしまう
カミンスキーの傍には娘のミリアム(アミラ・カサール)常にいて、彼女もセバスチャンを不快に思うせいもあって執筆どころか取材さえもままならない
仕方なく周辺の関係者への取材から始めるも、そこでかつての恋人テレーゼ(ジェラルディン・チャップリン)が存命と知り、既に亡くなったと信じ込んでいるカミンスキーに伝えたところ「会いに行きたい」と言う
最初は仲良くない二人が長距離をドライブしている間に、、、というよくあるロードムービーながらも、この監督と俳優なら凡庸に終わることはない
テレーゼの自宅まで行って再会するシーンでは何度も唸ってしまった
詳しくは書けないけれど半世紀という時の長さを感じさせられると同時に、これから自分が老いていくにあたっての参考にもなった
開けられる箱が目に前にあったとしても、開けるか開けないかよく考えてみるべきだし(開けるのなら)何事も受け止める覚悟が必要だろう
50年経てば想像を越える変化があるのだろうから
テレーゼを演じたジェラルディン・チャップリンの表情が素晴らしかった
チャップリンの娘さんの演技は数作観ているけれど中でも本作がピカ一だと思う