無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

351. リコリス・ピザ



ポール・トーマス・アンダーソン(PTA)監督といえば「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の印象が強く、「新作は青春恋愛映画」と聞いて驚いてしまった

 

そして今回は気になる要素が多すぎて、いつも以上の期待値で劇場へ

 

その要素とは、主演がフィリップ・シーモア・ホフマンの息子のクーパー・ホフマンと、カリフォルニア出身のトリオバンド・ハイムのアラナ・ハイムということ

 

ショーン・ペントム・ウェイツブラッドリー・クーパーが出演していること(如何にも話の本筋には関係なさそうなキャスティング!)

 

サウンドトラックが面白そうなこと

 

そして何より大好きなPTAの新作であること

 

これだけあれば十分というか、多すぎて集中できないかもと不安になった

 

サン・フェルナンド・バレーの街に、1973年当時あった店の名前とか、その意味とか、また見事に再現された登場人物の髪型から服装、街並みや(何十台も並んだ)車などのトリビアを追っかける楽しみもあるだろうけれど、既に多くのファンが語っていることもあって、絵を眺めるように「ぼうっと」楽しんだ

 

 

 

青春恋愛映画といっても、主人公は15歳の少年ゲイリー(クーパー・ホフマン)と25歳の社会人アラナ(アラナ・ハイム)という少し変わった組み合わせ

 

ゲイリーの猛烈なアプローチから始まるふたりの関係は、温度差があったり、互いに違う異性に熱心だったりしながらも続いていき、その過程でビジネス・パートナーになったり、強烈な個性のおじさん達に邪魔されそうになったり

 

この辺りの設定がどのくらい実体験と重なるのかわからないけれど、脚本も務めたPTAにとっては、作家が一生に一度しか書くことができない私小説のような作品だろう

 

 

 

2018年にロスで車を借りた時には、時々FMを聴く以外はずっとハイムのセカンドアルバムを聴いていた

 

何年振りなのか分からないくらい久しぶりに、アメリカの道を車の窓を開けて風を受けながら、そして好きな音楽を聴きながら走っていると

 

「ああ、この数年足りなかったものだわー」

 

と、妙に満たされた気がしたのを覚えている

 

 

 

普段はミュージシャンが役者を演じるのはあまり好きではないけれど(トム・ウェイツは例外)、家族はさておきアラナの演技は素晴らしかった(彼女の育った環境にかなり近い設定だから他の作品での演技は未知数だし、そもそも女優活動を続けるのかもわからないけれど)

 

 

ちなみに件のサントラは、予想以上に素晴らしく(通な選曲というよりも、当時ラジオでよく流れていた曲を並べた感じ)このところ毎日聴いている

 

映画で使われているトッド・ラングレンの「アイ・ソー・ザ・ライト」も収録してほしかったな

 

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