引用元:amazon.co.jp
前々回に続いてダルデンヌ兄弟の監督(脚本も)
2014年のベルギー・フランス・イタリア作品
休職していたサンドラ(マリオン・コティヤール)は、体調も回復したので復職を希望していた
ところがサンドラは金曜日に上司から解雇を告げられてしまう
その事実以上に驚きであり、ショックだったのは
「サンドラが解雇を免れるには、16人の従業員の過半数がボーナスを放棄して彼女の復職優先に賛同すること」
として既に投票が行われ、解雇が決まったと言う上司
生活がかかっているサンドラを心配した同僚が食い下がってくれたお陰で、週明けの月曜日に再投票が(無記名で)行われることになる
まだ体調がすぐれないサンドラは激しく動揺しながらも、週末に同僚たちの自宅を説得に回ることを決心する
前々回同様、「よくもこんなストーリーを思いついたなあ」と感心(呆れ)した
そしてサンドラ役に(何かといろいろ闘っている)マリオン・コティヤールをキャスティングした時点で、本作の成功は約束されたと言えるほどのハマリ役
一番好きなシーンは、夜の車中でサンドラと夫と一番サポートしてくれている同僚が交わす会話
説得工作が行き詰まり、重苦しい空気が流れる中、同僚が、「私も自立するために離婚しようと思う」と、また「迷っている自分の背中を、サンドラの行動が押してくれたの」と告げる
その瞬間、三人の中で(状況は苦しいけれど前を向こうとする)小さなあかりが灯り、夫が
「ロックでも聴こう!」
とラジオ?のヴォリュームを上げ、流れてくるヴァン・モリソンが歌う「グロリア」に合わせて歌う(叫ぶ)ところ
長年好きで聴いてきた曲なのに、楽しみ方をわかってなかったと思うくらい三人の盛り上がり方が新鮮で印象的なシーン
観始めてすぐに、「これって違法解雇じゃないの?」と
規則や、法令、ルールなどについて考えそうになるけれど、この映画を楽しむにはそういう検証は後回しにすべきだろう
大胆にスルーして「この状況をどう捉え、どう対処するのか?」に集中して鑑賞するとスルスルと作品に入り込める
(もちろん映画作品にするための誇張は随所に見られるけれど)国や時代が変わっても、労働者と経営者のこうしたやりとりは変わらないし「労総者たちの間で問題解決がなされるべき」という仕組みを作ろうとする経営者の都合のいい思考も、変わらない
そして、こういう苦しい局面に遭遇した時にこそ人間性が出るというのも古今東西、同じなんだなあと
「自分は常に同僚を優先して行動する」
と言い切ることも出来ないし、生活の困窮度合いで意見が変わることもあるだろうけれど、少なくとも「こういう時に人間性が出る」ということを認識した上で、自分の決断をしたいと思う
もちろんそんな状況にならないことを願うばかりだけれど