引用元:Yahoo!映画
2011年のアメリカ映画
かつて将来を大いに期待された高校球児、ビリー・ビーン(ブラッド・ピット)は、ニューヨークメッツからドラフト一巡目(全体23位)で指名され、高額な契約金を手にプロ入りする
ちなみにこの時の同期入団(全体1位)は、ダリル・ストロベリー
名門スタンフォード大学の奨学生のオファーを蹴ってプロ入りしたビリーだったが、その後は泣かず飛ばず
在籍6年で148試合、3本塁打という通算成績で現役生活を終え、スカウトとして第二の野球人生を始める
そして2001年
アスレチックスのGMに就任したビーンは、資金力のない球団で良い選手を集めることに限界を感じていた
トレードの交渉の為にインディアンズのオフィスを訪れた際、イエール大卒の一風変わったピーターという若者を見つける
ピーターは、統計データから選手を客観的に評価する「セイバーメトリクス」を駆使して、今までにない選手評価をしていた
ところが球団の中ではさほど尊重されず、ビリーの目にはピーターはくすぶっているように見えた
ビリーは彼の手法に大きな可能性を感じ、自身のサポート役として採用
そしてアスレチックスは他球団が見向きもしない選手を発掘して(低予算で)強いチームを作ることを目指していく
これ以前のアスレチックス(パワーヒッターの活躍で黄金期を築いた)から、その後の低迷、そしてビリーたちの手腕で復活を果たす過程を(最初は限られた記事で、途中からテレビで)観てきた
原作も(何故か原文も翻訳も)読んだこともあって、思い入れの深い作品
2001-05年頃、オークランド・コロシアムのスタンドで、ビリーが揃えた若手投手陣を必死で励ましているオールドファンの声援を今でも(まるで本作の一場面のように)思い出す
ベイ・エリア(サンフランシスコ、オークランド)には、ジャイアンツとアスレチックス、それぞれのスタジアムがある
車で20分程度の距離ながら、この二つのスタジアムの様子は大きく違っていた(おそらく今でもそうだろう)
ポップコーンやホットドッグを抱え、応援グッズを身に着けた家族連れが多く押し寄せるジャイアンツのスタジアムと、熱心な野球ファンが独り(或いは男性同士)で来てビール片手に黙々と観戦するアスレチックスのスタジアム
ビリーとピーターによるこの新しい手法は、スカウトの選手採用だけでなく、ファンのレベルでも野球観戦の幅を広げる楽しみを与えてくれた
またそれと同時に(後にこの手法を採り入れる他球団や関係者たちが)数字に踊らされて愚かな判断をするという悪影響も出始める
約20年経った今では(数字に踊らされている様子は依然として見られつつも)従来の基準と程良くバランされ、より広い視野で客観的なスカウティング、そして観戦が可能になった
ベテランスカウトが活躍する「人生の特等席」の世界にはロマンも感じるけれど、スカウトの注目が本塁打数からOPS(出塁率と長打率を合わせた数値)に変わってきた今、選手評価だけではなく選手のプレイやファンの観戦方法にも影響を与えた本作の方が(野球映画としては)リアルな作品
野球以外の統計データと同じで、そのパワーを過信することなくどう読み取るべきのか考えて(この部分こそが命)判断することが重要
突き詰めれば「誰の(何の)ための統計なのか?」を考える必要があるという気がする