無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

254. エリザベスタウン

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引用元:amazon.co.jp

 

2005年のアメリカ映画

 

折り畳み式の携帯電話が、2005年感を引き立たせている 

 

 

スポーツ・シューズのデザイナーとして働いているドリュー(オーランド・ブルーム)は、新しくデザインしたシューズで大失敗してしまい会社に大きな損害を与えてしまう

 

恋人とも最近はうまく行かず、自宅で自殺しようとしているところに電話があり、父親の死を知らされる

 

父親が住んでいたケンタッキー州エリザベスタウンに向かうため、最悪の精神状態で乗り込んだ飛行機

 

ドリューはその機内で、かなり世話好きなフライトアテンダントのクレア(キルスティン・ダンスト)に出会う

 

 

 

 

 

この映画を観たある批評家が「落ち込んだ男性の前に突如として現れ、そのエキセントリックさで相手を翻弄しながらも人生を楽しむことを教えてくれる(そしてその男性の恋の相手となる)夢の女の子」というキャラクターを

 

マニック・ピクシー・ドリーム・ガール(MPDG)

 

と名付けた

 

実在しない(するはずがない)くらい天使の様な女性

 

というニュアンスだろう

 

キャラクターとしては古今東西の小説や映画に登場しているから、「その役に名称をつけただけの話」という理解も可能だけれど、このMPDGという名称が付いたことで、

 

「名称そのものが男性本位だ」

 

という批判にも晒され、前述の批評家はこの名前を使うことを撤回してしまう

 

もちろん、使い始めた人が撤回発言しようが、世の中で使われ始めた言葉を禁止する権限もなく、今でも映画のレビューなどでたまに使われている

 

批判する人の気持ちもわからなくはないけれど、言葉の恐ろしさを痛感させられる現象ではある

 

この言葉さえなければ、批判は起きなかったところに、言葉の出現によって目覚めたように怒り出すことも怖いけれど「何がそれに該当するのか」という選出が、過去に遡って行われることについては、新しい言葉の誕生を楽しんでいるとしか思えない

 

 

MPDGの例としては、本作のキルスティン・ダンストの他に

 

ローマの休日」のオードリー・ヘップバーン

 

アパートの鍵貸します」のシャーリー・マクレーン

 

恋する惑星 」のフェイ・ウォン

 

バッファロー'66 」のクリスティーナ・リッチ

 

などが挙げられるらしいのだけれど、批判している人たちもこれらの作品を普通に楽しんだのかもしれないし、今後自然に楽しめなくなるのも淋しい話

 

 

 

閑話休題

 

キルスティン・ダンストの役どころに限らず、エリザベス・タウンという街や、そこに暮らす人々の設定も、かなり現実離れしている(街を歩いている人も含め、全員がドリューの父親の死を惜しみ、ドリューを暖かく迎える)

 

世話好きな女性のキャラクターは、ドリューが夢の中にいるような感覚を、うまく演出している要素の中のひとつでしかない

 

性別が逆だったりLGBT(+)も含めた作品が溢れている今の世の中、MPDG議論にヒートアップする前に映画を楽しみたい

 

本作中に流れるトム・ペティの音楽が、如何にもHeart of Americaな感じで心落ち着かせてくれる

 

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