無人島シネマ

忘れてしまうには惜しい映画 および雑記

161. ノマドランド

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あっという間に8月

 

 

 

アカデミー賞を獲ったということもあるけれど、それよりもフランシス・マクドーマンドの新しい主演作品ということで鑑賞

 

ちなみに受賞したのは、作品賞、監督賞(クロエ・ジャオ)、そして主演女優賞(フランシス・マクドーマンド

 

2021年のアメリカ映画

 

 

 

 

 

2008年に起こったリーマンショック

 

多くの会社が倒産して直接打撃を受けた社員や家族

 

そして特定企業に依存していた街の住民たちも二次的な影響を被ってしまう

 

 

ネバダ州エンパイア(砂漠の中にある町でラスベガスよりもサンフランシスコに近い)で倒産した工場の城下町で代用教員として勤めていたファーン(フランシス・マクドーマンド)は、夫を亡くし、仕事も失い、ついに家も手放しノマド遊牧民)の様にキャンピングカーで生活していくことを決心する

 

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キャンピングカー生活をしている仲間と共生し、その時々で必要なだけ働き、生活費を稼ぎ、煩わしい家族や親戚や近所付き合いなどから解放され、美しい大自然に囲まれて暮らしていく

 

 

姉妹からそして仲間からも勧められる(家の中での)同居を断る際に意見が対立するシーンはあるけれど、本作ではノマド生活の是非については描かれていない

 

誘いを受け入れて家屋で暮らすこともできる中で、ファーンは車の故障に大金を払ってもこの生活を続けようとする

 

 

 

多くの観客は「こんな生活をよく続けられるなあ」と思って観ていることだろう

 

 

ノマド生活者の中には敢えてこの生活を選んでいる者も居るだろうけれど、基本的には経済的な事情でこの生活に追い込まれている

 

スキルを活かした仕事というワケにもいかず、肉体的負担の大きい単純作業で生計を立てるのは高齢のファーンたちにとっては「いつ出来なくなっても不思議の無い」食い扶持とも言える

 

また何かと支え合うことの多い生活は割と人づき合いも必要で、そういうコミュニケーションが苦手そうなファーンも車の故障やタイヤのパンクで困った時には逞しく助けを求めている(この辺りアメリカ人は総じて得意そう)

 

他にも思ったほど自由ではないことが多く、長時間駐車するのにもお金が結構かかり、電気や水道、排せつ物の処理や、冬の寒さなど過酷な環境の中で支え合って暮らしている

 

彼らの集まりの中でも最大のものになると4万人以上にもなるという(アリゾナ州クォーツサイトでのイベント) 

 

そこでは合同の食事会やいろんな生活術講座に加えて「ステルス・パーキング」の講習もあり人気を博しているという

 

彼らの多くは正規の料金を支払ってキャンプ場に停車することはせず、ウォルマートの駐車場や、倉庫街の空きスペースに長時間駐車する

 

もちろん近隣住民や従業員から通報されてしまう可能性もあるから如何にそれを回避するかというノウハウを学ぶ講習だ

 

 

ここまでの話でも十分に世知辛いけれど、更に言えばこうしたことができるのも白人に限る(通報され警察が駆けつけた後の対応が大きく異なる)という

 

 

1960年代のアメリカン・ニューシネマに憧れた世代が今になって自由で反体制的な生活を送っていることには一見ロマンも感じるけれど、短期間で社会に戻っていった当時の若者に対して戻る場所の無い今のノマド生活者たちの状況は深刻でしかない

 

ノマドワーク」とか「デジタルノマド」という言葉を聞くようになったけれど、米国などで実際のノマド生活者がコロナ禍によって一層増加していることを考えると、言葉のチョイスとしては「軽すぎる」気がする