引用元:filmarks.com
2009年のアメリカ映画
本作に登場する、「出張に飛び回るビジネスマン」の足元にも及ばないけれど、新型コロナウィルスの蔓延以前は時々出張の機会があった
本作も機内上映作品リストの中にあるのを何度か見かけたけれど、その度に
「フライトマイレージを必死で集めるビジネスマンを描いたコメディ、という予測を越える作品ではないだろうな」
と勝手に想像して、観る機会を逃してきた
マイレージに絡むストーリーは予想以上でも以下でもなかったけれど、それに対するシニカルな視点もあるし、従業員解雇についてのストーリーも交差していて食わず嫌いを反省した
ライアン・ビンガム(ジョージ・クルーニー)は、従業員の解雇ができない上層部に代わって解雇通知を行う外部コンサルタントとして全米を飛び回っていた
そんな彼は、結婚もせずに自由で気ままな生活をエンジョイし、「人間関係や荷物の負担が無い人生の美徳」というテーマで自己啓発スピーチもしていた
出張先で出会った、自分と同じように出張で各地を飛び回っているアレックスという女性とも良い仲になる
そんなある日、ライアンは上司から新しいプログラムを紹介される
それは野心的な若手社員、ナタリー(アナ・ケンドリック)が提唱する、テレビ電話による解雇通知だった
自身の仕事は、実際に足を運んで対象者と顔を合わせ、話し合わないと完結しないと信じるライアンは、このプログラムの欠点と、ナタリーの経験不足を指摘する
「こんな小娘のアイディアに踊らされている会社もどうかしている」と、ライアンは必死で抵抗しようとする(その「小娘感」をアナ・ケンドリックがうまく演じている)
上司はライアンの主張に納得するも、プログラム推進のために次の出張にはナタリーを同行させるようにライアンに指示する
ライアンたちがブラックベリーを使ってメッセージのやりとりをしているのが(時代が感じられて)非常に面白い
僅か12年前の作品というのにこの機器が登場するだけでかなり古な印象に
アレを両手で操作する姿は不格好だと思っていたので、当時からできる限り人前で使わないようにしていた(持ってる意味がない?)けれど、この作品を観てその判断はあながち間違っていなかったという気がする
出張で飛び回ることの馬鹿馬鹿しさをコミカルに描いているけれど、そのストーリーが成立するのも「もはや出張は不要」という意見が行き過ぎたものという共通理解があればこそ
コロナの騒動で「行き過ぎではなく現実的」と認識されるようになった今、懐かしむような感覚で観直してみるタイミングかもしれない
或いはまた今後、海外出張(旅行)するようになれば本作の印象もまた変わる(戻る)かもしれない
そしてこうした揺り戻しがSDGsとは関係なく起こりそうなところに何とも愚かさを感じる
本作で描かれている「急激な変化に対して必死に抵抗している」人たちも、変化が時間をかけて緩やかに起こるなら受け入れた(無意識?)だろうに、と思うと恐竜の時代から変わらない真理があり、そして人間のキャパシティ(適応能力)は生存能力と同義なのかもしれない