無人島シネマ

忘れてしまうには惜しい映画 および雑記

104. 紙の月

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2014年の作品

 

女性銀行職員が、年下男性のために犯罪(横領)を犯してしまうというストーリー

(実話をベースにしているわけではないらしい)

 

 

銀行で契約社員として働く梨花宮沢りえ)は、エリートの夫と都内で二人暮らし

 

安定した平穏な毎日ではあるけれど、夫は自分の仕事にも理解が薄く、妻として充実感の無い日々を過ごしていた

 

ある日、梨花は顧客から預かっていた1万円を(手元に持ち合わせがなかったからという理由で)使ってしまう

 

もちろん直ぐに戻すつもり(実際にそうした)だったけれど

 

「顧客のお金を一時的に持ち出すことに成功し、その行為が露見しなかった」

 

という気づきは、梨花の感覚を狂わせていく

 

そんな時に出会った顧客の孫の大学生、光太(池松壮亮)と梨花は恋に落ちてしまう

 

 

 

 

冒頭に書いたように

 

「女性銀行職員が年下男性のために犯罪、、 」

 

と書くと、ありふれた貢ぎ系の横領映画みたいだけれど、本作の肝は、光太の登場は、梨花の犯罪が加速するタイミングにたまたま合ってしまっただけ、というところ

 

もちろんこの二人が出会っていなければ、梨花の軽はずみな犯罪は自らの埋め合わせで露見しなかった(そして以降は足を洗っていた)だろうし、同じタイミングで出会った魅力的な男性なら「誰でも良かった」ということでもないだろう

 

とはいえ梨花の犯行は、光太のために行われたものには思えなかった

 

大学生に貢ぎたかったわけでもなく、贅沢な暮らしに憧れていたわけでもなく、単純に気がおかしくなる程に退屈していて、尚且つ夫からのリスペクトの無さに絶望し、日々の生活に微塵も意味を感じられなくなってしまったのだろう

 

夫にとっても、職場の人たちにとっても「私でなければいけない理由」なんてどこにもない、という思いが強くなり、自身の存在意義への不安が止まらなくなったのだろう

 

同じ様な境遇に生きている人たちが、同じ様な過ちを犯すことなく生活できているのは、倫理観や、配偶者からの理解や、愛情、或いは我慢によって叶えているとは限らない

 

「私って(俺って)結構頑張ってるじゃん」

 

という風に、勘違いでも「自分の存在意義を信じる」ことは大切

 

もちろん過信すると別の問題が起こってしまいそうだけど、冷静過ぎる状況判断は人を幸せにしない

 

 

 

映画を観終わって劇場から通りに出た瞬間が好きだ

 

現実から切り離された暗い箱の中から出て、喧騒、ネオン、通行人の動きなどに一気に包まれる感覚が面白い

 

特に異国だったり、昔の話だったりすると、目の前の街とのギャップに(時間にすれば2秒間くらいか?)意識が追い付こうとする感覚

 

本作の舞台は現代の東京

 

その感覚を楽しむことができたのは、時代や国の違いはなくてもストーリーの非日常性かもしれない