引用元:Yahoo!映画
上映中の「メイキング・オブ・モータウン」(アメリカ映画)を観てきた
ベリー・ゴーディが、1959年に始めたソウル・ミュージックのレコード・レーベルが発展していく様子を、関係者へのインタビューを通じて辿っていく
本人とスモーキー・ロビンソンが、仲睦まじく当時を振り返ってくれる
そして、ホーランド・ドジャー・ホーランド(H=D=H)やノーマン・ホイットフィールド、アシュフォード&シンプソンなどの作曲家チームに加え、スティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイなどのアーティスト、また営業部長や、品質管理のスタッフなど元社員までもが、モータウンについての面白い話を披露してくれている
ドキュメンタリー作品ながら、貴重なライブ映像の他に、リハーサル風景なども
紹介されるエピソードも(何十年とモータウン・サウンドを聴いてきた者にとっても)初耳なものが多く、勉強になった
驚いたのは、こんなに夢のある曲を量産するレーベルの運営が、非常に計画的に、また組織的に行われていたこと
作曲家チームを競わせて曲のクウォリティ向上を目指したり、会議の中で忌憚のない意見を交わした上で収録曲を選んだり、アーティストの身だしなみや受け答えについても教育したり、という、ベリーの優れた経営者ぶりにも驚かされる
本人曰く、そうしたアプローチは、レーベルを立ち上げる前に働いていたフォードの生産ラインにヒントを得ているというのも面白い
自動車工場での職を求めて、南部から黒人がやってきて、教会などで歌いシンガーに育っていくという、産業と音楽の繋がりも、この街ならでは
そんなベリーも、70年代に入ると、それまでの方針が通用しなくなり、いくつかの挫折を経て、必要なレベルで方向転換をしていく
その中で、ベリーが育てた数人のシンガーや作曲家たちは、ベリーの思い描いていたレベルを超えて成長し、ついにはモータウンを巣立っていく
鉄壁のチームワークを誇ってきたファミリーに訪れた栄枯盛衰の波
90年代や2000年代だったら、ベリー・ゴーディもここまで穏やかに振り返ることはできなかったかもしれない
ピンポイントで刺さったのは、秘書だったマーサ(&ザ・ヴァンデラス)がリードボーカルに抜擢された理由と、モータウンの社歌、、、どちらにも大いに笑えた
リハーサルで「マイ・ガール」をア・カペラで歌うシーンには思わずドキッとさせられた(このシーンだけでも劇場で観られて良かったし、他の演奏シーンでも音がお腹に響く心地よさを感じられた)
本作を観て、ふと思い出したのが「セッション」という音楽映画(2014年アメリカ)
ジャズ・ドラマーを目指す若者が、狂気的な指導者にドラムを習う過程を描いた作品
何の計画、理念もなく、暴力的な圧力によって生徒の演奏レベルを支配しようとする指導者、そして陸上競技の記録更新を目指すアスリートの様に演奏する生徒、、、音楽はあくまで素材であって、作品のテーマは、「狂気や圧力による支配とその精神的な影響」であって欲しいし、そこに魅了された人が多いから話題になったと思いたい、、、という程に、(演奏技術は別にして)音楽に対する姿勢も、演奏する音楽も稚拙で独りよがりに感じられた
モータウンのチームが一丸となって、聴く人の心を掴もうと(しかも最初の10秒で!)したのとは正反対だ
2019年のアメリカ映画